CMATMODS Brownie



2008年製 筐体下地が透けたブラウン塗装 1590N1サイズ筐体 青LED サイドジャック トゥルーバイパス
DCジャックはインジャックサイド 9V駆動 プリント基板 内部表記 Brownie 2008

内部は基板が垂直に設置されています。JFETが五つ確認できますが、目視で確認できたのはFairchild J201が二つ、交換可能なソケットに入ったFairchild MPF102が二つです。裏蓋には交換用のFairchild 2N5457が付属しています。購入した時期は海外からで2008年頃を記憶しています。丁度元アメリカ大統領バラク・オバマ氏の「CHANGE」が大きく取りあげられていた時期に購入した覚えがあります。


本機はブラウンサウンドをコンセプトとしたペダルの先駆けとなったディストーションペダルです。CMATMODS製品でも国内では一番名前の知られたペダルではないかと思います。そのトポロジーは海外の自作コミュニティで生まれたBSIAB2(Brown Sound In A Box2)の影響を色濃く受け継いでいます。

2001年にEd Guidry(エド・ギドリー)氏によって設計されたBSIABは、Jack Orman(ジャック・オーマン)氏による「AMZ Mini-Booster」をベースに開発されました。
2004年には「diystompboxes.com」の創設者でもあるAron Nelson(アーロン・ネルソン)氏により、ローパスとハイパスを組み合わせた、所謂ビッグマフ系トーン回路が追加され、Doug Hammond(ダグ・ハモンド)氏等の調整・改良が加えられ、DIYコミュニティでの成熟とともにBSIAB2へと発展していきました。
この回路を由来として、所謂アンプインアボックス系のペダルは派生が生まれていくこととなりますが、本機はトーンコントロールが追加されたのみの純粋なBSIAB2に限りなく近い作りとなっています。過去に運営していたサイトでは公式ライセンス取得済みと明記され、回路設計者Ed Guidry(エド・ギドリー)氏への感謝が記載されていました。


CMATMODSはChad Matthews(チャド・マシューズ)氏により2006年頃にテネシー州クックビルで起業しました。創業当初からブティックトーンをお値打ちな価格で提供することを掲げて運営され、コミュニティ発祥のMODキットやペダルをハンドメイドで制作して販売していました。製品にはクリッピング切り替えを追加したTSやRATなど当時流行りでありつつも、かなりの高額で販売されていたブティックペダルの特徴を持ったペダルや、ビンテージ由来のROSSコンプやコーラスをモデルとしたペダルがラインナップに並んでいました。完全オリジナル主義ではなく、DIYコミュニティから生まれたアイデアの再構築を主軸としていたため、ブティックペダルに明るい人から見るとその製品は、どこかで見たことがある仕様説明の物も多く存在していました。
本機Brownieは創業当初から販売が開始されたモデルで、自作しなければ手に入らなかったBSIAB2を完成品として販売し、ブラウンサウンドをイメージした回路として広く知られるきっかけとなりました。


Brownieは製造時期で内部基板の変更が確認できます。2012年頃までの個体には内部に交換用のJFET 2N5457が付属されていました。ソケット式で基板に付けられているMPF102もしくはJ201を2N5457に変更することで、ゲインのコンプレッションを調整することが可能です。内部表記が2013と記された2013年以降のバージョンでは、FETの付属は廃止されたようです。見分け方としては、本機のようにCMATMODSのロゴ表記が簡素で9V仕様のみである場合はこのように、裏蓋のコルク片に2N5457が二つ備えられているバージョンの可能性が高いです。その後は基板右下にダミーソケットが備えられ、付属した2N5457を保管できる作りへと変更されました。基板の形状も正方形に変更されています。
CMATMODSのフォントが波打った筆記体で、仕様電源が9~18Vと表記されてる個体は仕様変更の過渡期で、ダミーソケット式とMPF102標準仕様機が混在しているため、外見だけで判断するのは困難です。基板のトリマはJFETのバイアスで、出音が不安定な場合は調整が必要になります。


コントロールはレベル、トーン、ゲインの三つです。
2N5457を使用せず、最初から搭載されていたMPF102で動作を確認しました。

レベルは音量調整です。私の環境では全て12時の設定でユニティゲインとなりました。ゲインを最小まで絞ると出力はされません。全てのノブを最大まで回し切ってもハウリングは発生せず十分な音量を稼げます。ゲインを8時以降9時手前辺りまで上げることで、レベル最大でユニティゲインと同量程度の音量となりました。完全なクリーンではなくクランチ程度の歪みで、やさしく弾けばクリーンを保てますが和音は歪みやすいです。

トーンはハイパスとローパスを合わせたビッグマフスタイルのトーン回路になっています。右に回すと高域が強調されブライトなサウンドになりますが、高域よりに傾くと、少しだけノイズが気になる傾向があります。全体的に低域が不足している感じを受けます。

ゲインは歪みの調整になります。12時地点でもオーバードライブ程度にしっかり歪んでいます。本格的に歪みだすのは2時以降を過ぎてからになります。若干飽和したガサッとした歪みですが、歪みが増すほど滑らかできめ細かい歪みになります。中域の出方が独特で温かさを感じるブラウンサウンド的な空気感を感じられます。

付属の2N5457は、未加工のままコルク片に突き刺さっているため足が長いままですが、短く足を切りそろえることなくこのままでも交換は可能です。このタイプの基板ではソケットに入ったJFETの平面・文字面側が向き合った形で取り付けます。

MPF102から2N5457へ変更すると、滑らかさよりも前に出るパワーが増して高域はクッキリとして、不足していた低域も伸びて改善されます。12時地点での音量は差がありませんが、最大の音量は上がっています。ただし、全てのノブを最大まで回すとキーンというハウリングを引き起こします。トリマの調整で修正可能かもしれませんが、個人的にはマイルドな音色の標準の方が好みなため、この調整を行わず元のMPF102へ戻しました。


独特な飽和感による音の広がりがアンプっぽい雰囲気を出しています。歪みの幅はオーバードライブからディストーションまで可能ですがメタルには低域が足りておらず、高域のソリッド感もありません。また少しノイズが気になりました。
音の類似というとBSIAB2の派生でもあるWampler Pedals Pinnacleのビンテージモードに似ています。PinnacleにはBrownieには備えられていない中域を変化させるコンツァーノブがありますが、歪みの質にも追従して変化を強く与えてしまうため、両者を全く同じ音にすることは再現できませんでした。Pinnacleは2N5457を使用したBrownieをよりハイファイにして安定させた感じです。MPF102を使用したBrownieは粗さと飽和感が共存したマイルドな歪みになっています。旧式感があるとも言えるのですが、今となってはそれも味なのかなと思います。

本機は既に生産を終了しています。CMATMODSは2020年の年末を境にオーダーを受け付けていた公式サイトのドメインが失効しています。一般的な出荷もほとんどない状態が続いていたようなので実質的な廃業は既に始まっていた可能性はありますが、公の廃業告知などを行わずひっそりとブランドに幕を下ろしました。