Electro-Harmonix GLOVE


2014年製 アルミにプリントを直貼り MXR筐体 赤LED サイドジャック トゥルーバイパス
DCジャックは筐体上部 9V駆動  内部スイッチで18Vに昇圧可能 緑のプリント基板 表面実装  内部表記 EC-D102 Rev.B ©2013
オペアンプはTL082Cを確認できます。クリップ部分にチップ版MOSFET 2N7002を二つ。基板右側は主に電圧調整回路となっておりTC7660HEOAが確認できます。その下にはスライドスイッチが設置され、左18V⇔右9Vと切り替えできるようになっています。

本機は2013年にElectro-HarmonixのNANOシリーズ拡大に伴って発売されたオーバードライブ/ディストーションです。2013年のElectro-Harmonixはペダルの小型化に力を入れ始めていた時期でした。そのなかで新商品として、オーバードライブペダルを3機種同時発売したうちの一つです。
Tube ScreamerのMODの第一人者であり、ANALOG.MANを主宰するMike Piera(マイク・ピエラ)氏に助力をしてもらったTS系「East River Drive」、こちらは厳密には復刻にあたるCMOSインバータを使用した(いわゆるレッドラマ系)「Hot Tubes Nano」そして、クリッパーにMOSFETを使用した本機「GLOVE」になります。
公式には何が元になったかなどの声明は出していませんが、本機の回路のトポロジーはブティックエフェクトメーカーFulltoneの「OCD」ととてもよく似ています。当時は定番機種として扱われていたOCDはヴァージョンによって微細な調整が加えられているのも特徴です。GLOVEではOCD V1.4をモデルとしている説を稀に目にしますが、実際に基板に目を通すと、歪みを成型するクリッパー回路が2N7002を二つ使用した対称になっていました。V1.4を除いた2012年にアップデートされた1.7までのOCDを元にしている可能性が高いです。

但し、本機は二つのコンデンサを除いて表面実装によるチップパーツのみで製造されているため、全てのコンポーネントをスルーホールで組み立てているオリジナルOCDとは出音の違いに影響してきます。OCDでは異なる電圧のアダプターを使用することにより最大18Vでの駆動が可能でしたが、GLOVEに追加された機能として、供給された9V電圧を内部で18Vに昇圧させる切り替えスイッチを備えています。そのため、GLOVEに推奨9V以上のアダプターを繋げると破損するため誤って繋げないようにしてください。

本機の名称がなぜグローブなのかはよくわかっておらず、紫を基調としたデザインなため分かりにくいですが、よく見るとレザーのような皺がプリントされていることに気づきます。Electro-HarmonixのNANOシリーズは、アルミの筐体にグラフィックを印刷しただけのものは特に傷つきやすく、簡単に印刷が剝がれてしまうため美観を気にする方は注意が必要です。

コントロールはボリューム、トーン、ゲインの三つ。全体のEQ出力を調整するシフトスイッチと筐体内部に18Vに昇圧させるチャージポンプのスライドスイッチが内蔵されています。
比較にはOCD1.4がモデルとなっているMXR M249 Super Badass DYNAMIC O.D.を使用し、全て12時設定で昇圧させない9Vモードで比較しました。

ボリュームの音量は全て12時でシフトモードをオンにして鳴らすと、原音より若干高めに聞こえます。私の環境では少し下げた11時頃がユニティゲインとなりました。シフトオンでゲインを最低まで下げたクリーン設定だと、ボリューム12時辺りがユニティゲインとなりました。僅かに歪み、比較したDYNAMIC O.D.に比べると高域が狭く、丸いクリーンとなります。
シフトオフでは全体の帯域がカットされるため音量が一段下がります。全て12時設定がユニティゲインとなります。ゲインを最低まで下げたクリーン設定では、アウトプット最大がユニティゲインとなりブースターとしては心もとない音量に感じます。

トーンは最大位置をフラットとして高域をカットして機能します。したがって12時地点では若干明瞭さに欠けますが、ここはゲイン位置との兼ね合いもあるため高ゲイン設定ではある程度抑えても良いかもしれません。ここはDYNAMIC O.D.との違いが良く表れており、GLOVEは最大までトーンを上げても音が中域よりで、DYNAMIC O.D.のような高域がしっかりと前に出るクリアなトーンは再現できません。これはシフトオフのゲインを下げたクリーン設定でも感じられGLOVEは若干ぼやけています。人によってはこれを中低域の温かみと感じる方もいるかもしれません。

ゲインは12時だと既に歪んでいるオーバードライブな設定となっています。可変幅は広く、クリーンに近い設定から、しっかり歪んだディストーションまでカバーできます。ゲインを上げるほど低域も追従する形で伸びてくるため、トーンでバランスを取るとマーシャル系ペダルのような明るいロックなサウンドが作れます。DYNAMIC O.D.とは歪みはクリップの影響で違いが感じられるのではと思いましたが歪み自体は似ています。トーンの効き方がDYNAMIC O.D.の方が高域が出るため、設定次第ではGLOVEの方が一歩奥に引いた感じもあります。

シフトオン・シフトオフは出力調整です。抵抗値を切り替えて、高域をどこまで通すかを選択しているため、クリップ部分に関与するような根本的な倍音や音色には作用していません。DYNAMIC O.D.と比較すると音像の明瞭さに違いが感じられ、特にシフトオフ設定とDYNAMIC O.D.のカットモードと比較すると、GLOVEは音が沈んでいるため少しだけ音量が低く感じられます。

内部の昇圧スイッチを18Vへ切り替えると。ヘッドルームが確保された分音量が上がり歪みがクリアになります。ただし別のペダルになるような変化は無いため過度な期待は禁物です。クリーン設定ではより歪みが弱まりクリアで解像度が上がります。歪ませた場合は少しコンプ感が軽減されます。倍音は少し薄れた感じがありますので、私はクリーン寄りの設定なら18Vモードが向いていると感じました。比較したDYNAMIC O.D.とは基本的な解像度とEQの比重が違うため、よりクリアに大音量のようなことにはなりませんでした。音量増加も最大設定では確かに上がっている感じはありますが、9Vと18Vにそこまで大きな差はありません。

総評はどちらも基本はOCDというペダルですが、若干中域よりで音が丸いのはGLOVE。
よりクッキリとハイファイなのがDYNAMIC O.D.です。歪みの感じはあまり変わりませんが、その差をどれだけ大きくとらえるかは、個々の受け取り方に強く差が出ると思います。

本機GLOVEは現在も生産されています。発売以来高い評価を得ており、新品$100以下というハイコストパフォーマンスを誇ります。ただのクローンでは無く、MXRサイズという小型な筐体ながらチャージポンプ回路まで内蔵させたのは、表面実装基板ならではの設計と言えます。
OCDは一時、Fulltone社が廃業を急に発表したために中古相場が急激に高騰したこともありましたが、2026年現在はFulltoneは再び営業を再開したため、落ち着きを取り戻しつつあります。現在ではV1.14仕様と最新版のV2(未確認ですが、廃業前のV2と少し異なった調整がされている可能性があるため、2.01として分けているユーザーもいます)が販売されています。価格は昨今の為替事情にもより、2010年代と比べると2倍近く上がってしまいました。一方、GLOVEは当時と比べても価格上昇は上昇していないため、発売当初よりもさらにお手軽な選択肢となっています。