MXR M249 Super Badass DYNAMIC O.D.


2022年発売 グレーの下地に赤いレーシングストライプ MXR筐体 赤LED サイドジャック トゥルーバイパス
DCジャックはインジャックサイド 9V駆動 赤いプリント基板 内部表記 ASSY REV (B0) 9/15/2021 MMI20

Badassシリーズでは唯一スルーホール部品が主体で構成されています。
オペアンプはTexas Instruments TL082CP MOSFETには2N7000が二つ、保護用トランジスタ2N3906が一つ、D2にゲルマニウムダイオードを使用していることから恐らくV1.4がベース。一部ディスクコンデンサを使用しており抵抗材は全て金属被膜で統一しています。

本機は2022年の後半に販売されました。MXRカスタムチームを主導するWay Huge Electronicsの創業者・開発者のJeorge Tripps(ジョージ・トリップス)氏による「BADASS」シリーズの第五弾として販売された2026年現在においての最新作です。前作のM236 Super Badass VARIAC FUZZではヴァーガンディのスパークルフィニッシュというデザインでしたが、今作はレーシングカーのデザインに影響された赤いストライプが特徴的で「Super Badass 」という'70s風なネーミングにも似合う装いとなっているのではないでしょうか。最近ではCSP033 il torinoが、CSP033G GRAN TORINO BOOST OVERDRIVEとなってレーシングストライプ仕様になって復刻されたこともあり、デザインチームにレーシングカー好きが参加していそうです。

近年のMXRは2018年のKLON系M294 Sugar Driveを始めとし、2020年にはトランスペアレント系CSP027 Timmy Overdrive、本機と同じ2022年はブルースブレイカー系CSP039 Duke of Toneとブティックオーバードライブにおける名作を自社でリビルドして次々と発表してきました。Sugar Driveと同様正式には公表していませんが、本機M249 Super Badass DYNAMIC O.D.は、ミディアムゲインオーバードライブの金字塔「Fulltone OCD」がモデルとされています。
2022年はちょうどFulltoneの創業者マイク・フラー氏が8月ごろにブランドの廃業を急遽決めた年でもありました。そのため少しタイミングが良すぎる、などといった憶測も飛び交っており、あらかじめ試作として作っていたの物を急遽製品化したのではないかという噂もありますが真相は分かりません。本機は最初はアメリカの一部のショップ限定での販売でしたが、要望の声が大きかったためその後レギュラー品となっています。ジョージ・トリップス氏が関わっているとなると、ただのクローンとして製品化するようなことは考えにくいのですが、本機の内部は今までのシリーズと異なりとてもシンプルな作りとなっています。

それを踏まえて、まずOCDというペダルはどういったオーバードライブなのかというと、2000年中期から後期のFulltoneのフラグシップモデルの一つともいえる大ヒット商品で、オーバードライブからディストーションのような深い歪みにも対応できる、ブティック系定番オーバードライブとして当時は非常に人気がありました。詳細を記載するとかなりの長文となってしまうため割愛しますが、使用しているポットや、細かい音色の変更が加えられ続けられた結果、初期V1.1~V1.3の青LED期、クリップ部分にダイオードを追加したV1.4赤LED期、ダイオードを廃止するなど調整が加えられた1.5~1.7赤LED期、バッファードバイパスに選択可能、表面実装化された2.0青LED期とザックリ分けてもこれだけの違いが存在しています。初期型はモールドがしっかりされていたのですが、V1.3 以降はモールドが廃止され、V1.4の時期に回路解析が進みました。というのもマイク・フラー氏が公式HPにてV1.4を一旦の区切りとして過去の仕様変更の詳細を記載していました。V1.4は一般的に調整のバランスが良いとされ、V1.7に次いで広く流通していたこともあり、V1.4仕様が代表的なバージョンの一つとなっています。そのため、V1.4の回路を参考に作られたOCD系が多く流通しており、本機もまたクリップ部分にゲルマニウムダイオードを使用していることからV1.4がベースと思われます。

コントロールはアウトプット、トーン、ゲインの三つ。ブーストとカットに切り替え可能のトグルスイッチが一つ。

説明書にあるように全て12時でブーストモードから開始しました。
比較には同じOCDをモデルとしたElectro-Harmonix GLOVEを使用しました。

アウトプットの音量は全て12時ポジション、ブーストモードだと原音より若干高めに聞こえます。少し下げて10~11時ごろがユニティゲインとなります。これは比較したGLOVEと同じ挙動です。ブーストモードでゲインを最低まで下げると、アウトプット12時位置がユニティゲインとなります。単音ではクリーンに聞こえますが、和音や強いピッキングだと微かに歪みます。アウトプットを12時以降に上げることで音量を稼ぐことができますのでブースターとしても使えます。
カットモードでは音量が下がるため、全て12時位置がユニティゲインに変化します。ゲインを最低まで下げた場合は、アウトプット最大がユニティゲインになり、ブースターとしては音量不足感が否めません。

トーンは右に最大に回した位置をフラットとし、左へ回すと徐々に高域をカットする働きをします。このペダルの元になったOCDはアップデートで改善されていったとはいえ、低域の主張が割と強いため12時より上げて使用しています。歪ませる際もしっかりと粒立ち良く歪ませるために高域よりの設定が良いと思います。GLOVEと最大位置で比較すると、DYNAMIC O.D.のほうがブライト寄りです。

ゲインは12時だとオーバードライブ程度の歪みです。下げればクリーンに近いところまで調整できます。12時以降はノブを少し動かすだけでも歪みがかなり増していきます。3時手前辺りでもクランチには十分な歪みですがそれ以降は、低域が増加してズンと残った芯のある歪みになります。この辺りはディストーションとオーバードライブの境目と言いましょうか、トーンも上がってくると、私にはほぼディストーションと言ってもいいくらい歪みます。歪みの質は粗めなのですが、ゲルマニウムダイオードによるクリップが効いてるのもあり、オペアンプベースで作るような硬さはありません。GLOVEよりもDYNAMIC O.D.の方が明るく、解像度が高く感じました。少しだけGLOVEの方が音量が低く聞こえるため音量を上げて比較しましたが、DYNAMIC O.D.が音がクリアです。並べて比較して感じる程度の差で、本質はほぼ同じペダルです。

ブースト・カットモードは出力の強弱を選択できます。仕組みとしてはトーン回路の手前の抵抗値の選択ですので、クリップ選択のような大きくコンプ感や倍音が変わるようなものではありません。ブーストでは原音より若干高めの元気のある音、カットモードでは高域をカットした沈んだ音になります。私がOCDに求めているのは、骨太で元気のあるロックサウンドだったので昔からブーストモード(HP)で使用していました。この挙動もGLOVEと同じなのですが、DYNAMIC O.D.のブーストはより明るく、GLOVEのシフトオフ(DYNAMIC O.D.ではカットモードに値します)はよりダークになります。ミッドブースト的な動作と説明しているメディアや宣伝も見かけますが、実際は高域低域をカットして中域を際立たせているに過ぎないため、中域をブーストさせるようには機能していません。

操作感ではDYNAMIC O.D.はフットスイッチが柔らかく、パチッと軽く切り替わりますが、GLOVEは硬めです。本家OCDは18Vによる駆動でヘッドルームを稼ぐことができますが、DYNAMIC O.D.は筐体に貼られているシールも、公式の説明書にも9V駆動推奨と明記されています。比較したGLOVEはチャージポンプ回路を備えているため、内部スイッチを切り替えることにより9V駆動のまま18Vで動作させることができます。ただし、GLOVEで18Vモードで駆動させても、9V駆動のDYNAMIC O.D.とヘッドルームの広さは同程度、歪みの解像度の高さではDYNAMIC O.D.の方が高いです。

比較に本家OCD1.4を使用していないため、断定的なことは言えませんが、同じスルーホール構成で作られているDYNAMIC O.D.の方がより近いのではないかと思います。対するGLOVEは完全表面実装基板でチャージポンプ回路まで増設されているため機能面では上です。元がOCDなので良いペダルではあるのですが、逆にジョージ・トリップス氏としてはちょっとそのまま過ぎてて、少し物足りなさも感じてしまいました。良質なOCD系ペダルを探しているのなら試してみる価値はあります。

本機は現在も生産されています。OCDは競合機種が多く、比較にも使用した安価ながら昇圧回路を内蔵した「Electro-Harmonix GLOVE」や、外見も似せている「WARM AUDIO ODD Box v1」もゲルマニウムダイオードを使用していることからV1.4仕様となっています。また廃業を決定したFulltoneでしたが、廃業から翌年の2023年にJackson Audioの協力により、Fulltone USAとしてブランドは復活しました。OCDのラインナップも最新版のV2と完成形の一つであるV1.4の二つから選ぶことができます。また、現在のOCDは非公式ではありますが一部愛好家の間ではV.2.01と呼ばれており、Fulltone廃業直前まで生産していたOCD V2とは若干異なっているようです。