Wampler Pedals Pinnacle



2013年製 チェリースパークル仕上げ 1590N1サイズ筐体 青LED サイドジャック トゥルーバイパス
DCジャックは筐体トップ 9V駆動 プリント基板 内部表記 P_3-13_SMD

JFETが六つ使用されています。目視で確認できなかったQ1を除いて、Fairchild J201は五つあります。解析では全てJ201が使用されているようです。バージョンによっては一部MPF102が使用されているようですが、本個体しか所持していないので未確認です。興味深いのは内部にはPinnacle STDと明記されたシールが貼られています。トップジャック仕様になるなど、外観が大きく変更されるPinnacle STDとの過渡期の個体のようです。


本機はDIYコミュニティ発のBSIAB2(Brown Sound In A Box2)から着想を得て、ゲインブーストなど改良が加えられたブラウンサウンド系ディストーションペダルです。
元の設計者は2001年にEd Guidry(エド・ギドリー)氏によって設計された回路を起源としており、数々の革新的回路を考案したJack Orman(ジャック・オーマン)氏による「AMZ Mini-Booster」をベースに開発されました。2004年に「diystompboxes.com」の創設者Aron Nelson(アーロン・ネルソン)氏やJFETを多段使用したアンプライクペダルの先駆的設計者で知られるDoug Hammond(ダグ・ハモンド)氏等の改良が加えられ、BSIAB2へと発展していきました。

一時、ブラウンサウンドで流行ったペダルに「Cmatmods Brownie」がありましたが、Brownieも多少のJFETの選定の違いはあれどBSIAB2由来のペダルだったりします。本機では後にフォーラムで広まったコンツァーを追加した4ノブ版BSIAB2をWampler Pedalsの創設者Brian Wampler(ブライアン・ワンプラー)氏によって、MOD畑出身らしい改良が施されています。元々Wampler氏はHarmony Centralのフォーラムにおいて『IndyGuitarist』のハンドルネームで活動し、そのモデファイで評判を得た技術者でもあります。2007年にWampler Pedalsを起業しますが、当時からポッドキャストやYouTubeに意欲的に出演して、技術的な解説を共有してくれる方でもあり、現在でもYouTubeチャンネルで自社他社問わず回路解説を自ら行っています。


Pinnacleは現在のWampler PedalsのHPにもlegendaryと記されているように、同ブランドの知名度を一段押し上げたフラグシップモデルの一つです。IndyGuitarist時代から既に構想は出来上がっていましたが、一般に流通し始めるのはWampler名義に変更してからになります。バージョン違いのバリエーションが多く、2009年に最初のバージョンV1が発売されました。赤い筐体に一枚のクリアテープを使用して、名称やノブの効果が記された簡素な作りでしたが、既に4ノブ2スイッチの基本的な設計は本機でも引き継がれています。2011年頃には、定数や使用しているJFETに少し変更を加えたPinnacle V2、ゲインブーストスイッチをフットスイッチで演奏中に切り替え可能にし、内部トリマにてさらにボリュームを上げることができる機能を追加したPinnacle Deluxe V1を販売しました。その後グラフィックが真空管から、名称のイメージに近い尖峰が描かれたPinnacle Standard STDへと変更しました。トグルスイッチの並びも、縦から横に変更されています。コンツァーも効果を分かりやすくするためにMID CONTOUR表記へ変更されています。

Wamplerといえば当時はPinnacleと同ブランドの2大看板に当たるPlextortionがあり、こちらはマーシャル系として当時は人気があった覚えがあります。2010年代前期あたりからいわゆるアンプインアボックスペダルが流行り始めるのですが、Wamplerもその時流に乗って新作を展開し、ディストーションやハイゲイン系を得意としていた印象です。Soldano SLO-100を意識したSLOstortionや、Mesa Boogie Triple Rectifier系を志向したTriple Wreckなど、私も当時は所有していました。モデファイ文化出身のブランドらしく、機能を追加していくうちに大型化していく傾向が当時は感じられ、私の嗜好からも外れはじめたので多くを手放しましたが、本機Pinnacleは数少ない手元に残したWampler製品だったりします。


コントロールはボリューム、トーン、コンツァー、ゲインの四つ。ゲインステージにおける定数を変化させることによるキャラクター変更用のモード切り替えスイッチと、ゲインを増加させさらに歪ませるためのブーストスイッチが装備されています。
スイッチの表記が分かりにくいですが、このバージョンでは上がMod.(モダンモード)、下がVint(ビンテージモード)です。Boostスイッチは上に上げることでゲインが上がります。

ボリュームは音量調整です。ビンテージモード且つブーストモードオフでまず確認します。私の環境では全て12時設定では丁度ユニティゲインとなりました。コンツァーを左へ回すと僅かに音量が上がりますが、ボリュームノブ単独操作での音量増幅が効果的に機能します。ゲインを絞り切った最小設定では音は出力しません。僅かに出力されるローゲイン設定ではボリューム最大でもややユニティゲインには届いていません。少しゲインを上げてやると解消します。コンプレッションが強く、ローゲインでも歪んで聴こえます。アルペジオや強めのニュアンスでつま弾くとより感じられます。
僅かなゲイン状態から音量とキャラクターを一新させる方法として、ブーストモードをオンにする方法があります。ゲインステージが追加され(ボリュームが最大値でのブースト操作は、切り替えの際に発生するボフッとしたノイズが目立ちます)音量がユニティゲインまで上昇し、歯切れのよいオーバードライブに変化します。この状態のローゲインは明るく、ドライブ感があるため本機の目指すブラウンサウンドとはかなり違った印象になりますが汎用性の高さを感じられます。若干ブライトよりなのでトーンやコンツァーで調整することをお勧めします。

スイッチを切り替えた時の音量差ですが、モードをビンテージからモダンに変更すると音量の増加が感じられます。ブーストモードの切り替えでは、ゲインブーストをオンにすると僅かに音量は上がりますがキャラクター側ほど変化は感じられません。

トーンはビッグマフ系のハイパスとローパスを組み合わせたトーン回路になっており、12時から左へ回すと低音が強調され、右へ回すと高域が抜けてくる動作をします。ブラウンサウンド的にはやや高域側に傾けるとそれらしさが出てきます。ブースト選択とゲインブーストの有無でも高域は変化するためモードごとに調整が必要と感じました。

コンツァーは中域の出方を調整します。ビッグマフ系のトーン回路ではミドルを調整できない欠点を補う、重要な働きをします。歪み方にも影響が大きく、左へ回すほど中域が開けてきて歪みが荒くなります。右へ回すと中域は抑えられますが歪みはキメが細かくコンプレッションがより感じられます。

ゲインは歪みの調整です。12時設定では結構中域が強めの湿った感じがあります。高ゲイン設定ではコンツァーを右に回して中域を抑える代わりに、歪みの質をより滑らかに整えた方がエディのようなブラウンサウンドらしい粘りに近づくと思います。トーンは過度に高域寄りな設定にはしなくても大丈夫です。オーバードライブからハードロック辺りのゲイン幅に加え、コントロールとモードが多いので多彩に設定できますが、設定にはモード間の相性があります。

ビンテージモードとモダンモードですが、効果としてはギター側のピックアップ切り替えに近い効果にも感じられました。私が感じたのはビンテージ側がフロント、モダン側がリアです。ビンテージはかなり音が丸く感じ歪みの質も角が取れています。モダン側は音が前に飛び出る感じで勢いよく聴こえます。私はモダン側で他のコントロールを操作して、最終的な音像を作り込むのが好みでした。

ゲインブーストですがオンにすると、モード切り替えと同様にかなりキャラクターが変化します。ゲインブーストしてもEQが増幅できるものではないため、近代的なヘヴィなサウンドにはできません。圧倒的に低域が足りていない印象を受けました。ゲインステージが追加される形になるため、コンツァーを中域寄りに設定したり、ハイゲイン設定だとハウリングを発生させます。ボリュームを下げるなどで対処できます。
ただこの仕様だとフットスイッチで切替可能なDeluxeでも、設定次第ではスイッチを切り替える際にノイズが発生してしまうのではと疑問が生まれました。通常モードではあらかじめハウリングが発生しない設定内で運用するのか、もしくは常時ブーストさせて使用する用途になるのではと思われます。

総評はブラウンサウンド風がメインのスイートスポットに設計されたディストーションです。
ただし、モード切り替えでかなり外れた音にもなるので、簡単にエディの音が出したいという方にはそこまで向いていない感じもします。70年代~80年代のハードロック向けといった方がしっくりくるかもしれません。ノイズは動作や設定次第では所々気になる箇所はあります。極端な設定でなければ、気にならない範囲にはまとまっているとは思います。自由度の幅がMOD畑出身のWamplerらしさが出ていると思います。ただちょっとマニア向けな感じもあります。


本機は現在生産終了しています。現行品はEQが三つに分かれ、新しくTS由来の単独使用可能なブースターが組み込まれており、インピーダンスによるコンプレッションの相性を調整するSAGトリマを側面に用意するなど、大幅にコントロールが追加されたPinnacle Deluxe V2のみが販売されています。Wampler氏によると通常版ではブラウンサウンドのみに特化していましたが、前々から様々なサウンドに対応できるようにしたかったため、そのような大掛かりな仕様変更となったと語っています。