CMATMODS The Black Plague



2008年製 黒い筐体に厚めの塗装 1590N1サイズ筐体 青LED サイドジャック トゥルーバイパス
DCジャックはインジャックサイド 9V駆動 プリント基板 内部表記 2008 Black Plague

オペアンプはNational Semiconductor LM308Nがソケット式で搭載されています。LM308Nは現在では廃盤となっているオリジナルRATにも使用された旧型のシングルオペアンプで、現代的な高性能オペアンプとは異なる特性が独特のファジーな粗さを生み、オリジナル派には欠かせない重要なコンポーネントでした。
整流用ダイオード1N4001を三つ使用した非対称クリップと、赤色LEDを二つ使用した対称クリップに切り替えできるようになっています。JFET出力バッファ段にはFairchild 2N5458の使用が確認できます。抵抗材は全て金属被膜を使用しています。非対称ということを除いて典型的なRATのレシピ構成です。


本機はCMATMODSにより、2008年に製造が開始されたLM308Nチップをベースにしたディストーションペダルです。RATをモデルにしていることは内部やノブの動作仕様からも察しができます。CMATMODSはChad Matthews(チャド・マシューズ)氏により2006年頃にテネシー州クックビルで起業しました。創業当初からブティックトーンをお値打ちな価格で提供することを掲げて運営され、DIYコミュニティ発祥のMODキットやペダルをハンドメイドで制作して販売していました。
本機もその流れを汲んだ機種の一つで、当時盛んだったRATをベースにクリッピングを切り替えることで、一台で複数台のバリエーションを補うことができる、自作改造界隈ではポピュラーな機能でした。
有名どころではKeeley RAT MODやLandgraff MO-D、JHSなどが挙げられますが、クリッピングの切り替えにどのマッチングを採用するかで企業間の特色が表れていました。


名称のBlack Plagueは黒死病=ペストを意味します。ネズミに寄生したノミを媒介として主にユーラシア大陸を中心として、人類史上最大規模のパンデミックを引き起こした死に至る病です。筐体に赤と黒で表現されたデザインはおどろおどろしく、ホラー映画のようなフォントが記された赤い墓石がデザインされています。ツマミの効果もScream(レベル)、Cry(フィルター)、Death(ゲイン)とコンセプトに合わせた名称で雰囲気づくりに一役買っています。本機もまたRATから連想させて命名・デザインされたものと思われますが、このデザインは一般向けでは無いため、中身は良くても外観上の理由から購入を敬遠する声も見られました。

当たり前のことですが、商品にとってまず最初に入ってくる情報は見た目からであり、デザインの良し悪しは製品に興味を示してもらえるかに繋がります。取り分けペダル業界ではデザインの秀逸さも重要です。デザインが気に入らなければ、同じベーススタイルのペダルを探せば候補は膨大に見つかるからです。また、このような誤解を招く名称は国際取引の際にトラブルを起こす原因ともなりかねません。
詳細な理由は公表されていないものの、本機はそういった点にも配慮したのか、2012年1月に公式HPにてRATIFIEDとして名称からデザインを一新してオーダーを開始します。内部PCB基板も変更されスイッチの位置が左に配置され9-18Vに表記が変りました。公式サイトでの製品説明ではThe Black Plagueと比較して、名称に触れた説明以外の変更は殆ど無く、音源サンプルも同じものを使用していました。


コントロールはScream(レベル)、Cry(フィルター)、Death(ゲイン)の三つ。
トグルスイッチでクリッピング設定を三種類に変更できます。

Scream(レベル)は音量調整です。この手の3モード切り替えの特徴ですが、モードのクリップ数が少ないほど音量は増加します。3モードスイッチの多くは、中央に一番音量が高いリフトモードが設定され、リフトに隣接するモードとの音量差に故障を疑う人もいますが、クリップ回路における仕様です。本機では中央(クリップ無し)>上(LED対称)>下(シリコン非対称)の順に音量は高く聞こえます。
Death(ゲイン)を最低まで下げるとScream(レベル)最大でユニティゲインとなるのはどのモードでも共通で、Cry(フィルター)を最小にすればスルー音とほぼ同じクリーンな音になります。特に使いどころが無い設定ではありますが、この状態からゲインを調整して、歪みが増したぶん、音量を削るといった方法で音を作っていくのも考え方としてはありかもしれません。オーバードライブ寄りの調整をする際は向いています。

Cry(フィルター)は高域をカットするローパスフィルターです。既存のRATと同じように右へ回すほどフィルターを掛けて高域を遮断します。RAT系はどこを最初に基準にするかで意見が分かれると思いますが、私は視覚的にどれだけ高域をカットしているのか捉えやすくするため、12時基準よりもフィルターを掛けない0基準から、徐々に高域を削っていく調整をすることが多いです。

Death(ゲイン)は歪みの調整です。3モードの選択によって可変域や倍音などの音色も変化します。

3モードは上がLEDによる対称クリップ(Turbo RATモード)中央がクリップを切り離したオペアンプのみのリフトモード、下は整流用ダイオード(シリコン)を使用した非対称クリップへと切り替わります。本機は取説にはモード詳細は書かれていませんが、実機を使用して確認しました。
各モードの音量変化はScream(レベル)で触れたので、ここでは主に音色の変化について触
れたいと思います。

上のLEDモードは、RATの公式の派生モデル「Turbo RAT」と同じLEDを使用したクリッピングになります。一般的には、LEDクリッピングはコンプレッション感が少なく、歪みの目が粗い分オーバードライブ寄りと評されることが多いです。ただ、個人的には十分ディストーション的に感じられます。

中央はクリップ部分を通らないリフトモードです。クリッピング回路への道を切り離すことからこう呼ばれることが多いです。そのため使用するオペアンプLM308Nの特性がもろに出る設定です。LEDよりも歪みは浅く、かなりブライトな音になるためフィルターを高めに設定しても問題ないと思われます。ブースターやオーバードライブ的な用途が向いているとされていますが私も同意できます。ですが、個人的にリフトモードはあまり使用しない設定だったりします。

下は整流用ダイオードを三つ使用した非対称モード。これが本機の特色が一番出ているモードだと思います。LEDモードの一般的なギターロックサウンドと打って変わって、きめ細かい歪みに、重心を下げたローエンドの伸び方などサスティンの伸びを感じられるフレーズを弾きたくなる音像です。フィルターは3時以降の低めでも良いと思います。高域のギラつきと低域の存在感が感じられます。

総評は、Turbo RATモード以外に、少しヘビィなラットを試したい人向けなRAT系ペダル。オリジナルRATに拘る人には、シリコンダイオードによる対称クリップモードが非搭載なためお勧めできません。グラフィックの先入観も少なからずあることを認めますが、非対称モードを使用した際はストナーやドゥームのような速さや勢いだけではなく、スローな音の波を感じられる音楽性に向いています。
勿論、これは個人的な感想であってモード選択の幅があるため、オルタナとかの90年代ギターロックでも十分対応できる機能は備わっています。


本機は既に生産を終了しています。販売時期は4年ほどの期間で、その後は新デザインのRATIFIEDへ変更されました。CMATMODSは2020年の年末を境にオーダーを受け付けていた公式サイトのドメインが失効しています。一般的な出荷もほとんどない状態が続いていたようなので実質的な廃業は既に始まっていた可能性はありますが、公の廃業告知などを行わずひっそりとブランドに幕を下ろしました。