Fulltone OCD V1.1



2005年製 白い鉄製シャーシケース 青LED サイドジャック トゥルーバイパス 止めネジは丸ネジ仕様
DCジャックはアウトジャックサイド 9V~18V駆動 緑のプリント基板 モールド大量 Fulltone特注スイッチ

内部は大量のモールドで確認及び基板の分解は困難な作りです。スイッチ周りの抵抗器にはカーボンを使用していることは確認できます。黒いフットスイッチにはFulltoneと記載されています。このスイッチはFulltoneの製品に使用される特注の物であり、かつてはFulltoneから直接購入することができました。この個体は少しフットスイッチの調子が悪いため、いずれ交換を検討しています。スイッチはどうしても消耗品となってしまうためツールとして使い続けるには交換は避けられません。Fulltoneは筐体は鉄製で頑丈ですが重量が391gと重いです。


本機は2005年より販売がスタートしたObsessive Compulsive DriveことOCDの初期型V1.1と呼ばれるバージョンになります。Fulltoneのフラグシップモデルと呼べるOCDですが、DOD 250を発展させた「Voodoo Lab Overdrive」に影響を受けたとされる回路の類似があります。本機では特徴といえるMOSFETによるハードクリッピング回路と、抵抗値の変更を可能としたHP/LPスイッチを追加した改良が加えられています。MOSFETを歪みを成形するクリッパーに利用することは、2000年代においては新たな発見の一つでもあり、日本のマーケティングにおいてはHP側をマーシャル、LP側をフェンダーに例えて表現するなど、ペダル側で作るアンプライクな歪みとして歓迎されました。現在ではちょっと誇張気味な例えに感じられるかもしれませんが、当時はLandgraffの3モードのようにアンプに例えて解説することが、一般ユーザーには分かりやすかった背景があります。

OCDはペダルで音を作ることを主体として作られましたが、Fulltoneの創業者Michael Fuller(マイク・フラー)氏は創業地カルフォルニアを拠点とし、音楽文化が盛んなロサンゼルスの様々なプロのフィードバックを参考にOCDにアップデートを加えていきます。Fulltoneは当時のブティックペダルメーカーではとても信頼できるプロのペダルを作るブランドとして、他のメーカーとは一線を画していました。


OCDはあるロットナンバーを境に仕様変更が行われていると、Fulltoneが詳細を公表していました。これはLEDが赤色に変更されたV1.4販売以降の頃だったと記憶しています。そのため1.4までの仕様変更は正確な数字が伝わっているのが現在の状況です。

バージョンシリアルナンバー前バージョンと比較したサウンドの大まかな調整
V1.1#000 ~ #4563低域と高域が強調された初期設定。特に低域が強い。
V1.2#4564 ~ #9473中域を強調。 低域と高域をやや減少。
V1.3#9474 ~ #16060中域をさらに強調。 歪み量をアップ。
V1.4#16061 ~低域を減少。 倍音を増やし、歪みをなめらかに調整。
内部の変更箇所は、

・1.2
 ・ボリュームポットを100kから500kに変更。
・1.3
 ・ドライブポットを500kから1MΩに変更。
 ・トーンポットを25kから10kに変更。
 ・トーンコンデンサを0.1uFから0.047uFに変更。
・1.4
 ・ボリュームポットのカーブを変更。
 ・クリップにゲルマニウムダイオードを追加して非対称クリップに変更。
 ・低域をカットするためにトーンコンデンサなどの値を変更。

注意点として、1.4には見た目が青LEDのままの仕様変更の過渡期のものが存在している。
内部にV1.4と表記されていてもV1.3のままの個体も存在している。
見た目はV1.4からLEDが青からに変更され、ノブの周りに矢印と共にComic Sansフォントで効果が大きく記されるようになりました。

私は過去に1.1、1.2、1.3を実際に所有して弾き比べたことがあります。当時は1.1とはあまり呼ばれておらずV1、V2といった具合で呼ばれていました。このペダルを比較したYouTuber(当時はYouTuberという呼び名も定着していませんでした)のgearmanndude氏の動画の影響もあったと思います。動画の公開日が2009/01/08とあります。OCDが1.4にバージョンアップしたのは2008年の2月ごろなので、ある程度市場に流通してからの比較だったのではないかなと思います。

当時の私も話題となっていたため視聴していました。私は既にOCDを所有しており、最近赤いやつに変更したんだよと知人から情報だけは聞いていたのですが、同じペダルを所有するより、他のメーカーをいくつも試したいのが私の当時の興味の対象で、改めて買いなおすまでもないというのが当時の私の判断でした。ですが、OCDが欲しいんだけど近場で売っていないけどネットで買えないか?という別の友人からの相談で「それなら一番評判がいいV3を探してあげるよと」ネットであれやこれや物色して購入したのが今でいうV1.3になります。まだV1.4が出て間もない時期だったので中古で1万5千円程度だった覚えがあります。

そこで所有していたV1.1と比べましたが確かに違っていました。ポットが変更してあるため同じ位置では当然音は違うのですが、歪みが前に抜けて、全体的ブライトよりな明るさを感じる調整で評判通りとても良かった覚えがあります。その後、V1.2を購入しましたがV1.1と比べて多少低域が薄くなったが違いは些細なもので、V1.3のような感動はありませんでした。その後、V1.1とV1.2どちらか手放そうと考えていた時、V1.2に先に買い手が付いたため、今も私の手元に残っているのがV1.1となります。

当時の評判ではV1.1はそこまで評判が高かったペダルでは無かった印象があります。歪みも粗目で設定次第では暴れる、特に低域が極太すぎてバンド内では抜けないペダルでした。正確には定番でおすすめされているんだけど、人によって好き嫌いが分かれているペダルでした。そんな中、V1.3の中域を強調した調整と、歪みを整理して明瞭にさせたV1.3がとても人気がありました。
gearmanndude氏の動画ではポット位置を同じにして比較していたため、V1.4は当時は音量が足りておらず、ダークであまり好みでは無いといった評判が囁かれていました。徐々に仕様の変更内容が知れ渡るようになると、今までの低域がやぼったいOCDとはかなり違う調整と広く認識されました。そのためOCDはV1.1~V1.3の青LED期とV1.4では使用した個体によって評価が分かれている要因にもなっています。

その後OCDはV1.4を一旦の完成形として1.5、1.6というマイナーアップデートを経てV1.7へと進みます。こちらは各バージョンで一番個体数が多い仕様になり、次いでV1.4が続くといった形です。V1.4以降はFulltone側から明確なシリアルナンバーでの変更時期を発表しておらず、ユーザー間の検証によるものになるため明記は控えさせていただきます。


コントロールはボリューム、トーン、ドライブの三つ。HP/LP切り替えスイッチが一つ。

ボリュームの音量は全て12時設定だと、HPモードではユニティゲイン、LPモードでは原音より低いです。V1.1ではトーンをある程度上げないと音量が付いてこない仕様になっているため、音量を稼ぎたい場合はトーンを上げて高域を解放してあげないと稼げません。ゲインを最低にしたクリーン設定の場合はHPではボリューム最大がユニティゲイン。LPではゲイン量の増減よりトーンの増減の方がより音量出力に影響を与えます。

トーンは高域のみに影響を与えるハイパスフィルターとなっています。12時地点でも既にカットされているため低域が目立っているので、右に回して高域を開いて上げるとオープンな響きになります。ただし、上げすぎても今度は歪みが暴れてくるので加減が必要かと思います。

ドライブは歪みの量ですが、全て12時設定では大人しく感じます。ですがこのドライブは急に歪みだし、3時地点では既にディストーションよりな歪みに変化しています。歪みの増加と伴って低域が目立ってくるため、HPモードでパワーコードを弾くとズンズンした歪みになっています。この時点でトーンが12時設定だとやはり低域とのバランスを取りたい為、トーンを上げると歪みの質が荒くなりはじめ暴れだします。音の塊がスコーンと飛んでいくようなイメージで、ひとりで弾いている本人は迫力があって良いんですけど、アンサンブルだとベースやボーカルとぶつかりそうな危なっかしさがあります。
LPモードは逆に高域が少し抑えられて扱いやすかったりします。最大音量はHPに比べると稼げませんが、逆にトーンを上げても暴れにくいため落ち着いています。昔はHPばかり使っていた覚えがあるんですが、現在はLPの方が好みに感じました。

比較にOCD V1.4に近いとされるMXR M249 Super Badass DYNAMIC O.D.も用意して比較していましたが、操作感がかなり違っているため、別のペダルを比較しているみたいになってきました。実際別のペダルなんですが……設定次第では似たような設定も可能ですが、OCDは全域極太ふとっちょで、DYNAMIC O.D.は明るくスマートな音なので、折角の持ち味を殺して寄せてもあんまりおもしろくないかなと色々比較していて感じました。クリップ数が違うため倍音にも結構違いが表れています。DYNAMIC O.D.の方が自然で滑らかに感じました。

数年ぶりに弾いてみましたが、当時と印象はそこまで変わりません。もう少し大人しい歪みだと思いましたが、思ったよりHPモードがじゃじゃ馬なくらいです。やっぱりこの太すぎる低域は人を選ぶと思います。当時の私は後段や前段にTimmyZendriveを繋げて低域や歪みを調整するなど色々試行錯誤していた覚えがあります。
現在ではV1.1は再評価されて、生産台数が少ないこともあり価格も急騰しているようですが、私は思い出補正もあるためV1.3が好みです。再評価のポイントとして18V駆動でのV1.1が素晴らしいとされていますが、確かにヘッドルームに余裕が出るため、歪みが澄み、もたつく低域も少し改善された感じを受けますが、ゲインを調整するとやはり低域が突出しており、使用している機材でも評価は分かれそうな感じです。そのため低域が悪目立ちさせないよう歪ませず使うのが向いているのかもしれません。初期型と言う骨董的な価値は認めますが、無理して高額で買うまでは無いかな…個性的ではあるので機会があれば一度は試す価値はあるかもしれません。


本機は既に生産終了しています。Fulltoneは品質も良く、価格もブティック系で堅実な価格設定($179~159)をしていた信頼できるメーカーの一つでした。しかし、マイク・フラー氏が政治的に物議を醸す投稿をしたために不買運動に発展してしまうなど、様々な要因が重なって急遽廃業を決断します。そのため当時は定番機種として市場に溢れていたにも関わらず中古市場は一斉に高騰し始めました。OCDといえば日本国内では赤LED期ならば中古相場1万5千円もあればいつでも買える身近な機種だったのにも関わらずです。現在ではFulltoneは2023年にJackson Audioの協力を経て、ナッシュビルに拠点を移して活動を再開しています。現在はOCDはV.1.4仕様の調整と、最新版V2の仕様から選べます。このV2は廃業前に生産していたV2と一部仕様が異なっているとの情報もあります。