Paul Cochrane Timmy Overdrive V1


2008年製 ブルーのラップ塗装の筐体  MXR筐体 赤LED サイドジャック トゥルーバイパス
DCジャックはインジャックサイド 9V駆動 ユニバーサル基板 内部に代理店シールあり
オペアンプはJRC4559Dがソケットにマウントされています。クリッピング切り替え部分を含めてもパーツ点数はそれほど多くない作りとなっています。V1と呼ばれている初期の個体は基板上にDIPスイッチがあります。数字側の位置が通常の設定でダイオードを4つ使用した対称クリッピング、左右どちらかをONにすると使用するダイオードを一つ追加し、非対称になります。両方オンにすると搭載されたダイオードを全て使用した対称クリッピングとなりゲインが上がります。V2以降はこのクリッピング切り替え機能はトグルスイッチにて裏蓋を開けずとも3モードに切り替えが可能になります。V1の内部スイッチでの組み合わせは4択ありますが、実質は3モードと考えてよさそうです。

V1と呼ばれる個体は2004年から2010年ごろまで生産されていました。2008年以降に内部をプリント基板に移行したため、プリント基板のV1も僅かですが存在しています。2010年にフットスイッチやDCジャック位置の変更。内部スイッチをトグルスイッチにするなどユーザーユーティリティを向上させた、後にV2と呼ばれる仕様になりました。サウンドに対する変更点は殆ど無いとコクレイン氏は記しています。記述によると、ボリュームとトレブルのポットをより自然な変化にするために、カーブを変更したこともありましたが、氏曰く仕様変更により違う音、新しい商品と誤解されて購入して欲しくないためにあえてそのまま販売していたようです。
たしかこの時期はFulltoneのOCDがバージョン違いで音が違うと騒がれていた覚えがあります。実際に回路に小さな変更点はありましたがカーブが変更されていた為、同ポジションで比較された動画は物議を醸していました。Timmyにおいてはユーザー同士のこのような騒ぎを避けたかったと思われます。

Paul CochraneまたはPaul C AudioはPaul Cochraneポール・コクレイン氏が運営する、アメリカのテネシー州マーフリーズボロにある小規模ペダル会社です。ペダル会社としましたが、初期にはアンプの改造や制作も請け負っていた覚えがあります。調べたところ彼のFBに前職はHeritage Amplifiersのアンプデザイナーとあります。創業2004年から2008年まで存在していたテネシー州のブティックアンプ会社で、ジャズ・ブルース向けのアンプを主に作っていたようです。アンプ製作者の作るペダルに優れたものが多いのは技術的な面も大きいですが、実際のアンプの生の音に向き合ってきた耳が影響しているかもしれません。

コントロールはゲイン、ボリューム、ベース、トレブル。内部のDIPスイッチで3モードに切り替え可能

ボリュームは、ボリュームノブ以外すべてを左に回し切った状態で12時の位置が原音と音量差がないユニティゲイン位置となります。この状態でもEQノブに当たるベースとトレブルの帯域カットはしっかり効きます。ゲインノブの影響をうけ、ゲイン最大ではボリュームノブは9時辺りがユニティゲイン位置となります。どのような用途でも十分な音量を稼げます。

ゲインは、このペダルの透明という印象に先行してしまいがちですが、クリッピングダイオードを四つ以上使用しますのでしっかり歪ませることができます。TS系などよりはしっかり歪み、ベースとトレブルを調整することによってガラリと印象が変わります。

ベースとトレブルですがこのペダルの基本位置は左に回し切った状態です。その状態が原音とほぼ同じ帯域設定です。右に回すごとに帯域を削るカット機能が強くなると考えると分かりやすいと思います。ベースカットを強めるとゲイン上昇に伴う、若干纏まりに欠けた低域を引き締めスッキリとさせます。カッティングやバッキング向けな調整です。トレブルカットを強めると高域を抑えウォームなトーンに変わります。最大まで右に回すと高域がモコモコな丸い音像になってしまうため、私は極端に上げることは無いです。増幅されることはないのであくまで原音・ゲイン増幅によるの余分なものを削ぐ使い方となります。

内部のDIPスイッチはOFF状態が基本設定で、ダイオードクリッピングを4つ使用したモードになります。どちらかをONにすることによりダイオードを5つ使用した非対称クリッピングとなり、倍音が加わり歪みの質が少しだけ変化します。両方ONにすることによりダイオードを6つ使用した対称クリップとなります、歪みが増し、コンプレッションが強くなりますがエフェクターで歪ませた感が強まります。音量が下がりますが内部DIP式だと、再設定には再度蓋を開けて切り替えなければならず、直ぐに比較できないので他のモードとの音量差は気にならなくなります。私はどちらもOFFにした基本設定で使用しています。

また、オペアンプはソケット式なため、好みのオペアンプに交換できるようになっています。
中古購入の際は違うオペアンプが搭載されている可能性もあるため改めて示しますが、標準装備はJRC4559Dです。

ローゲインよりさらにクリアな設定も可能、不要な帯域をカットして強調させるイコライザー的な用途でも使用できますが、クリッピング回路によるゲインを補足することも可能です。このペダルはアンプを補正、原音に忠実で引き立てる作用をするように設計されており、常時ONでも違和感が無く、エフェクターを使用していないように自然に馴染むことから、後にトランスペアレント(透明)と呼ばれるようになりました。今ではオーバードライブペダルの一つのカテゴリーにまでなっています。

本機V1とV2は生産が終了しています。現在はReverbでの直販のほか、少数の代理店のみにしか卸していないようですが、改良が加えられたV3が生産されています。また、Timmyにブースターが付いたTIMも生産は続いています。こちらはTimmyの親機に当たるモデルでこのペダルの歪み部分を抜き出したのが本機Timmyです。理由は分かりませんが、TIMという名称はコメディ映画『モンティ・パイソン・アンド・ホーリー・グレイル』の登場人物、火術師ティム・ザ・エンチャンターが由来とされています。V3の筐体にもそれらしきシルエットが描かれています。

価格は最初期は$120前後だったと記憶していますが、現在は$169に値が上がったようです。日本では代理店のタハラ経由で入ってきて2万5千前後でしたが、当時1ドル80円台になることも珍しくなかった円高でしたので、Paul CochraneのHPを見つけた際かなり安い価格設定で驚いたことがあります。技術が高いアンプデザイナーからすると、アンプに対するキャビネット製作工数や高電圧を扱う技術に比べればこの価格が適正と判断したのかもしれません。

また、MXRとコラボしたMXR CSP027 Timmy Overdriveも存在します。筐体がより小さく、外見上はコントロールとスイッチが本家と同じ仕様になっていますが、EQの効果は反転しており、左に回すほど帯域をカットする従来のペダルの操作に近い仕様になっています。使用しているオペアンプが本家とは違うようですが、音の違いについては所持していない為比較したことはありません。

本機は私が所持したものでは2台目で、当時の海外のペダルボードによく見かけたことで興味を持ち、最初はeBayで購入しました。そちらはシリアルが貼られていませんでしたが後に売却、国内代理店がタハラに決まったあたりで2台目を国内で買い戻し、今もメインのオーバードライブとして使用しています。裏のテープシリアルは日本にタハラ経由で輸入された正規輸入品のみに付けられています。