MAD PROFESSOR Mighty Red Distortion


2013年製 筐体下地が透けた赤い塗装 MXR筐体 赤LED サイドジャック トゥルーバイパス
DCジャックはインジャックサイド 9V駆動 プリント基板 内部表記 MRD V1.0 2010
オペアンプはAD797ANZを使用しています。超低ノイズでオーディオ用に使用される高級オペアンプです。採算度外視でセレクトしたとされていますが、FAC版でもしっかり使用されています。気になったのは緑のLEDダイオードをクリッパーとして使用していることです。見たところLittle Green Wonderに使用している物と同じようですが、ハンドワイヤードでは赤いLEDを使用してる写真を確認しているため、ここも拘ってほしかったという気持ちがあります。トランジスタにはBC550Cや2N7000を確認。抵抗材は全て金属被膜を使用していますが、コンデンサ類にはそこまでコストをかけていないようです。オリジナルではWIMA製を使用しています。


MAD PROFESSORの最初期から販売された機種の一つで、回路設計はBjorn Juhl(ビョルン・ユール)氏によるものです。ビョルン氏の個人ブランド『BJFE』のDyna Red Distortionの設計を元にしたディストーションという話を偶に目にしますが、ビョルン氏本人はフォーラム内において否定しています。彼が機種の名前を変えて、同じ回路の製品を作ることを好まないのは、本人の証言やMAD PROFESSOR側の広報にも記されています。

Dyna Redより歪みを増し、80年代的なミッドスクープが掛からない、モダンで重心の低いディストーションとして設計されました。Mighty Redは特にピックアップを選びませんが、ビョルン氏の好みとしてはストラトのようなシングルコイル。Dyna Redはハムバッカーが向いているようです。Mighty Redはよく80年代Distortionと言われますが、これはより高域寄りなDyna Redのイメージに引っ張られていることもあり、実際は80年代後半の低域が増してきたグランジ付近のディストーションがメインです。80年代の定義がどこを指すのかにも変わってきますが、高域が突出して明るく、ミッドが抑えられたサウンドではありません。(LAメタルやヴァン・ヘイレンらしさはあまりないということです)
MAD PROFESSORではより80年代感(ブラウンサウンド)を狙ったペダルとして「One」というペダルが後に販売されます。

本機はMAD PROFESSORのファクトリーライン製造のモデルです。2010年から台湾で製造がはじまりました。二層のPCB基板ですが表面実装を使用せず、スルーホール部品で作られています。
工場生産される前にはハンドワイヤード版Mighty Red Distortionとして販売していました。こちらは筐体の素材が亜鉛製で重く、電源ジャック口が丸いというハンドワイヤード版特有の仕様があります。外見上はFAC版と見分けが付きにくい機種で、少しだけ塗装の赤が濃いです。
内部は基板を絶縁するためのケースに覆われていて中身が見えない仕様です。Little Green Wonderと同じくハンドワイヤード版を所持していたのですが、内部の仕様がそのような状態でしたので基板を確認せず売却しています。当時はFAC版と音に違いはあまり感じられなかった覚えがあります。

Mighty Redは直訳すると強大な赤、力強い響きですがその名前の通り、太い芯があるサウンドを表しているネーミングです。稀にマイティの意味をAll Mightyと捉えて万能といった意味として捉える方をいますが、Mightyだけではそのような意味にはなりません。力強い、強力、非常にといった意味以外に素晴らしいという意味もあるようです。この光沢がある赤色にMAD PROFESSORの多用する白いノブの組み合わせは見栄えがよいです。

コントロールはボリューム、プレゼンス、ディストーションの三つ。

ボリュームは音量調整ですが、全て12時のセッティングだと音量は若干高いです。私の環境では11時ぐらいがユニティゲインとなりました。プレゼンスを上げると高域がカットされていない分、音量も当然上がりますが、ディストーションの位置のほうがより強く影響を受けます。ディストーションを最低まで絞った際のユニティゲイン位置は11時ごろとなりました。しっかりと低中域を中心に音が丸く歪んでいるため、クリーンブーストには向いていません。

プレゼンスは高域を調整するローパスフィルターとして作用します。右に回すほど遮断している高域を解放します。全開まで上げてもそこまでブライトな感じはありません。高域だけに作用するため、基本の設定となっている低域と、存在感を感じる中域を変化させることはできません。操作できる高域もディストーションを上げた場合は変化をしっかり感じられますが、歪みが弱いとプレゼンスコントロールの効きも弱くなります。割と設定が狭いためオールマイティとは言えません。

ディストーションは歪みの調整です。12時地点でもしっかりと歪んでいますが、プレゼンスを上げるとよりザラッとした歪みへ変化します。ザクザク刻むハイゲインペダルの領域までは歪みません。ヘッドルームは高めですが、適度にコンプレッション感があるためハイポジションのソロワークも、しっかりと存在感がある中域が支えてくれるため弾きやすいです。逆に巻き弦は低音がしっかり出ているため単音でも存在感があります。サスティンは減退していく波がとても整っているのも特徴です。また、ディストーションですがこのペダルはノイズがとても少ないです。

総評としては、中低域がしっかり存在していますが固定されているため、ペダル単体では意外と作れるサウンドの幅は狭いと思います。高域もカット方式ですから過度な設定にはできないようになっています。アンプの設定をブライト寄りにしたり、シングルコイルを搭載したギターのリアを使用すれば、80年代風っぽくはできないこともないですが。
歪みがきれいに整っているのでダークすぎたり、グランジのような荒さもないです。どっしりとした土台がありながらも、スタジオで作りこんだような整然さがある上品なディストーションです

本機は亜鉛筐体のハンドワイヤード版と共に現在生産終了しています。MAD PROFESSOR初期のディストーションペダルとして販売されたペダルですので、近年復刻しているトップジャック仕様のハンドワイヤード版で復刻する可能性はあるかもしれませんが、使用しているAD797が高価なため他の機種より生産しづらいと思います。私の印象ですが、当時のMighty Red DistortionはMAD PROFESSORの製品中で、特に人気があって注目されていたモデルではなかったと思います。また、最近ではBJFEからMighty Red Distortionが販売されているようです。希少なNPNトランジスタを使用しているとありますし、コンポーネントは違いがあるようです。