Freakshow Effects Brown Rabbit


2007年製 水色の筐体にハンドペイント 1590N1サイズ筐体 緑LED サイドジャック トゥルーバイパス
DCジャックはインジャックサイド 9V駆動 黄土色のプリント基板 内部表記  Brown Rabbit V4.0

オペアンプはNational Semiconductor LM308Nがソケット式で搭載されています。LM308Nは現在では廃盤となっているICで、オリジナルRATにも使用されていたことがあり、ブティック系では人気の高いシングルオペアンプです。整流用ダイオード1N4001を二つと、オリジナルにも使用されたスイッチングダイオード(恐らく1N4148)一つを組み合わせた非対称クリップと赤色LEDを使用した対称クリップに切り替えできる設計になっています。JFET出力バッファ段にはFairchild 2N5458の使用が確認できます。抵抗材は全て金属被膜を使用しています。オペアンプ周辺の定数や構成を見る限り、非対称クリッピングを除けば、回路は典型的なRAT系のレシピに沿ったものと言えます。

Freakshow Effectsは2007年にJustin Patry(ジャスティン・パトリー)氏によってメイン州ポートランドで起業しました。最初はmusictoyzやToneFactor、Prymaxe(3社とも廃業しています)といった一部楽器店のみに製品を卸し、カスタムメイドのみオーダー対応する形で運営されていたようです。日本には2010年以前のデザインにPCIのシールが張られたものを極僅かながら確認できますが、正式に国内代理店が付いたのは2011年以降で、ninevolt(LEP INTERNATIONAL)が取引先に追加されていることが当時のHPから確認できました。手書きで描かれた印象的なグラフィックは、イングランド出身のアーティスト兼作家のPatrick Corrigan(パトリック・コリガン)氏によるもので、このデザインのものがブランドイメージとしても良く知られているのではないでしょうか?2010年からはコリガン氏とは袂を分かち、地元メイン州の複数のアーティストに依頼してデザインを一新しました。それに伴い一部製品の名称も変更され、Brown RabbitはThe Rabbitに変更されました。内部にミッド調整用のトリマを追加したなどアップデートも加えられているとメーカー側の説明があります。

名称のBrown Rabbitは恐らく、モデルになったRATを文字っていると思われます。RAT系のペダルでは割と良く使われる他の動物に例える言葉遊びでもあります。
フットスイッチにより顔が描かれていない茶色のウサギが、どこか不気味で陰鬱な印象的なデザインに目を奪われ、当時国内では流通がほとんどされていなかったこともあり、海外から直接取り寄せました。マグリット的なシュールさも持ち合わせた、初期のコリガン氏による手書きの筐体には根強いファンもいまだ健在のようです。

コントロールはV(ボリューム)、f(フィルター)、D(ドライブ)の三つ。
トグルスイッチによりI 、II、IIIの三種類のモードに切り替え可能。

ボリュームは音量調整です。3モードの選択によって音量差が感じられますが、クリッピング切り替え回路の仕様となっています。II(クリップ無し)>III(LED)>I(非対称)の順に音量は大きくなるため、モードを切り替えたらその都度音量調整が必要となります。
ドライブを最低まで下げ、ボリュームを最大まで上げると原音と音色が変らないクリーンな音のユニティゲイン設定になります。

フィルターはRATではお馴染みの高域をカットするローパスフィルターを使用したトーン回路です。本機では既存のRATとは逆で、左へ回すほど高域を遮断します。視覚的にはこちらの方が分かりやすいです。

ドライブは歪みの調整です。3モードの選択によって可変域や倍音などの音色も変化します。

3モードの詳細は、左のIが非対称クリップ(シリコン)、真ん中のIIがクリップを切り離したオペアンプのみのリフトモード、右のIIIはLEDダイオードを使用した対称クリップ(Turbo RATモード)に切り替えられます。
各モードの音量変化はボリュームで触れたので、ここでは主に音色の変化について触
れたいと思います。

左のIモードは、異なるダイオードを組み合わせた非対称クリップによる、本機の特色が一番表れているモードになります。非対称的な目の細かいスムースな歪みですが低域が軽く、中域寄りな歪み方をします。オーバードライブ的という評判もありますがこの低域の薄さは確かにそうも感じられます。ローエンドのもたつきが無いため音の分離が良く、コードワークにも向いています。
以前寄稿した、本機と同じRATにルーツを持つCMATMODS社のThe Black Plagueでは整流用ダイオード1N4001のみを三つ使用して、低域が強調されたヘビィな音色を作っていましたが明白にキャラクターの違いが表れています。

中央のIIモードはクリップ部分を通らないリフトモードです。クリッピング回路への道を切り離すことからこう呼ばれることが多いです。オペアンプのみで音色の大部分を作るため、LM308Nの特性がダイレクトに現れます。LEDよりも歪みは浅く、かなりブライトな音になるためフィルターを高めに設定しても問題ないと思われます。ブースターやオーバードライブ的な用途が向いているとされていますが私も同意できます。ゲインを上げると少し割れたような歪み方がするのがこのモードの特徴と言えます。

右のIIIモードはLEDを二つ使用した「Turbo RAT」と同じクリップとなります。このLEDは筐体右上に顔を覗かせているLEDを使用しており、ギター側の信号の強弱に応じて点滅します。粗い歪みでコンプレッションが軽く、オーバードライブよりなディストーションです。90年代のギターロックでは良く聞こえるサウンドで、ファズ感が少なく扱いやすいモードになります。

総評は90~00年代のインディ・ギターロック向けのディストーションといった所でしょうか。モードIの軽やかなディストーションはRAT本来のファジーな歪みも持ち合わせているのですが、EQ特性がローファイ的な音の当たりの強さを控えており、バンドアンサンブル内でも馴染みやすい印象です。IIIモードではクリップで使用しているLEDがニュアンスの強弱に反応して発光するため、視覚的には賑やかなのですが、他のモードはブティック業界におけるRATモデファイ系では定番的なモードであるため、別の機種でも代用はできそうでもあります。The Black Plagueにも同じ構成のモードは搭載されており、正直ブラインドテストをされたら聞き分ける自信が私にはありません。

本機の仕様では既に生産を終了しています。後続機The Rabbitは2026年現在では現行品が少数ながら販売されています。Freakshow AmplificationとしてReverbにて出品や最近の販売取引歴が確認できます。ここ数年の内に小規模で活動を再開したようです。
Freakshow Effectsとしては2015年にはドメインが消失していることを確認しました。実際のところはそれより早く2013年頃には実質的に活動を停止していたという投稿もありましたが定かではありません。(海外フォーラムでは連絡が取れなくなってるといった2013年の投稿も見受けられます)
アートワークは再び変更されましたが、内部の基板を見る限り初期型と変わらずハンドワイヤードで制作されています。オペアンプにメタル缶タイプの物を使用し、抵抗には一部カーボンソリッド抵抗を使用するなどコンポーネンツにはさらに拘りが深くなったように感じられます。ちなみに、本機はWilcoのJeff Tweedyが2010年代に使用していたことが確認できます。Freakshow Effectsの創業年から考えて「Yankee Hotel Foxtrot」ではまだ生産されていないため使用していません。現在ではジェフ自身もペダルコレクターでもあるため、今はレギュラーでは使用していないようです。
初期の手書きデザインを手掛けていたPatrick Corrigan氏は、現在では多くの児童書を手掛けており、Freakshow Effectsで見られたどこかメランコリーな面影を時折表すこともありますが、明るい色彩が増えて親しみを感じられる画風へと変わりました。