MXR M104 distortion+ '82

MXR M104 Distortion+ '82

MXR M104 Distortion+ '82 全体像 enclosure top view

1982年製 マスタードにガサッとした質感 MXR筐体 赤LED サイドジャック ハードワイヤードバイパス
DCジャックはインジャックサイド ミニプラグ仕様 9V駆動 紙フェノール基板 基板表記104-3001-104
本機のポットデイトはアウトプット側が1378231 ディストーション側が1378119です。
読み方は137はポット製造メーカーCTS社のコードで、次の二桁が年数、残り二桁が週を表しています。アウトプット側の新しいポットを読み解くと1982年の第31週/8月以降に作られたと推定できます。

MXR M104 Distortion+ '82 Pot codes: 1378231 (CTS, 31st week of 1982)

内部のオペアンプはTexas Instruments社 UA741CP マレーシア製です。クリッピングに使用するゲルマニウムダイオードには1N270を確認できます。抵抗材は青いので金属被膜抵抗にも見えますがカラーコードが4本で、誤差を示す4本目が劣化して水色のようにも見えます。海外DIYフォーラムなどを巡って調べると、同じ時期の個体の写真で確認したところ4本帯は酸化が原因で腐食していますが、元々金色だったようです。誤差±5%なため青い色をしたカーボン抵抗材の可能性が高いです。配線部分には緑青が発生しており40年以上の歳月の経過を感じさせます。
手触りはツルツルでは無く、目の細かい厚紙のような手触りで、現行distortion+はまた違った質感です。LEDとミニプラグが標準装備となり、使い勝手を向上させたMXR期最後のオリジナル個体です。ちなみに重量は385gありました。現行のdistortion+の364gより20g以上重かったです。

MXR M104 Distortion+ '82 フェノール基板 Paper Phenolic Board

MXRは1971~72年にニューヨーク州ロチェスターで起業しました。Keith Barr(キース・バー)氏とTerry Sherwood(テリー・シャーウッド)氏の高校時代からの友人二人で起こしたオーディオ機材修理会社が始まりとされ、友人から、「ミキサーを修理するから社名にMixersから名前を取ってMXRにしたら」と提案されたのが由来だそうですが、解説したJHSのジョッシュ氏の冗談かもしれません。詳細を知りたい方は、JHSの「HOW MXR PEDALS BECAME LEGENDARY」という記事で解説されています。ダンロップ側の出しているMXRの詳細は「MXR: A SHORT HISTORY」で検索すればヒットすると思います。1974年に馴染みのある所謂MXR筐体が作られました。筆記体でMXRと書かれた所謂スクリプトロゴ期がこの年代です。1977年ごろに今のブロック体MXRへと変わります。この時期まではLEDも電源ジャックも付いていないものが仕様でした。その後1981年からLEDやDCジャックが追加され1984年の倒産まで生産されました。

コントロールはアウトプットとディストーションの二つ。

ここでは現行distortion+との比較を交えて評価します。二つのノブを12時に設定すると、原音よりも音量が低いのはこのペダルの個性といっても良いと思っています。この設定では現行distortion+と歪みも音量も同じように聞こえ、差がないように感じました。ディストーションノブを最小にしても僅かに原音を歪ませてしまうため、完全なクリーンはできません。また、この状態ではアウトプット最大がユニティゲインとなり、音量を稼ぐこともできません。この仕様も現行と同じです。
音量自体は、ディストーションがある程度高ければ1~2時頃がユニティゲインになりますので、アンプに合わせた音量を出すことは十分可能です。これも現行と同じ仕様です。
ディストーションですが、双方12時位置では音量が低く、違いが感じられませんでしたが、音量を1~2時頃にして聞き比べると違いが表れていたことに気づきます。違いはディストーションを12時以降に回すほど明確になります。本機82年式の方が明らかにローが太く、しっかりと芯を残した状態で深く歪みます。対する現行distortion+は低中域が軽く少し物足りなさを感じてしまいます。パーツが見ての通りヨボヨボなので、枯れ感があるのかと思いきや、ジューシーで現行より元気がある音です。

バイパスは現行品のdistortion+と同じハードワイヤードバイパスです。トゥルーバイパスでは無いため、現行distortion+と同じように音痩せを感じました。1台ならまだ許容範囲ですが、2台直列に繋がるとエフェクトオフ状態では高域のキラキラ感が失われ、トーンを絞ったようなバイパス音の音痩せがしっかり発生します。対策としてスイッチャーに入れるか、バッファーでの補正があると良いです。

私はエフェクトペダルのヴィンテージの経過した歳月や当時の時代背景から来る、骨董的な価値は認めますが、古ければ音が良いという考えには少し懐疑的な考えを持っています。ペダルはヴァイオリンやギターと違って電子機器であるため、その構成を成しているパーツの劣化は避けられません。そのペダルの使用頻度や保管状況にもよりますが、40年が経過した現在と、作られた当時では音に違いが生まれているはずです。一概に古い方が、音に太さや艶があるなどの評価は逆に疑ってしまう捻くれなのですが、distortion+に対しては82年式の方が太い音がすると認めざるを得ない結果です。

MXR M104 Distortion+ '82 Op-amp UA741CP Texas Instruments Malaysia

distortion+は現在も生産が続いています。81年に最終アップデートされた仕様のまま生産されていますが、出音は違いが感じられました。現行TSシリーズの弾き比べより、違いが分かりやすかったです。回路図上では現行品と82年製に大きな差はありません。しかし、使われているICやダイオード、ディスクコンデンサや抵抗などの一つ一つの小さな差が、全体的な大きな違いを作り出しています。
MXRは筐体の違う最初期、スクリプト期、LED・DCジャック無しブロック期、そして本機のLED付と大まかに分けて4世代のヴィンテージがあります。本機は一番若く、安いLED・プラグ付の物です。この時期はまだまだ安く、今でも1万円前後で買えることもあるのでヴィンテージペダルの入門としてもお勧めできます。MXRはスクリプト期のリイシュー品なども多く生産してきたので、LEDやDCジャックの有無、スイッチやナットの形状、ノブの白線の太さなど、しっかり調べて購入する必要があります。