MXR CSP038 BROWN ACID



2019年発売 サイケデリックなMXR筐体 青LED サイドジャック クリアノブ仕様 トゥルーバイパス
DCジャックはインジャックサイド 9V駆動 赤い表面実装基板 内部表記 ASSY REV (B1) 6/19/2019 MMI16
CSP041 HYBRID FUZZでは、近年では珍しくスルーホールで作られたファズでしたが、こちらは対称的にびっしりと表面実装パーツで埋め尽くされた現代的な作りです。チップダイオードはD4まで、トランジスタはQ8まで確認できます。分解してみると2層基板構成になっていました。スルーホールで付けられたトランジスタのQ1~Q3が確認できます。三つともすべてBC549Cが使用されていました。


本機は2019年にカスタムショップラインから、70年代の英国製シリコンファズをモデルにしたペダルとして販売されました。MXRでは今まで販売されていなかった、トーンベンダースタイルのファズペダルです。世界限定500台と記載しているショップもありますが、MXRの公式には書かれていないため正確な生産数は分かりませんが、限定生産品だったことは確かです。70年代のシリコンを使用しているということで、該当するトーンベンダーはと言うと、MkIIIの後期型とColorsoundのSupa Toneなどが挙げられます。Supa ToneはBIG MUFFに近い回路で知られていますので、厳密にはトーンベンダー系とは異なるのですが、トーンベンダーは回路が年式によって変化するので一つの定義に収めるには難しい機種です。そこが魅力的でもあり専門のコレクターがいるディープなファズでもありますが。本機はこれら当時のトーンベンダーと違ってパーツ数がとても多く、スルーホールで採用したトランジスタ3石構成を基本として、当時のサイケデリックな音像に近づけた、MXRのカスタムチームによる解釈が加わった独自のトーンベンダーと言えるのではないでしょうか。


サイケデリックなグラフィックデザインはAlan Forbes(アラン・フォーブス)氏によるものです。サンフランシスコを拠点としてキャリアは40年以上、タワーレコードのアート部門を経て数々のアーティストポスターを手掛けてきた巨匠のひとりです。近年のMXRはカーボンコピーやフェイザーでは英国のアーティスト集団「ILOVEDUST」、ハイブリッドファズでは「One Horse Town Illustration Studio」2026年最新機種のJAIL GUITAR DOORS DRIVEでは「Shepard Fairey」氏など、社外アーティストとのコラボが活発になっています。

名称のBROWN ACIDはグラフィックと同じ趣向の、60年代後半から70年代前半にかけてのウッドストック・フェスティバルをハイライトとした、サイケデリックムーブメントから付けられたネーミングで、当時のサイケやアシッドロックの音源を発掘するコンピ盤シリーズ『BROWN ACID』と偶然にも同じ名前だったりします。当時の音楽シーンで聴かれるファズサウンドをイメージさせるにはピッタリだと思います。


コントロールはアウトプット、トーン、ファズの三つ。

アウトプットの音量はノブが全て12時でユニティゲインでした。最大でもあまり音量を稼げるタイプではありませんが、ギター側のボリュームで歪み具合を調整するにはあらかじめ高めに設定した方が変化は付けやすいです。ファズを最小設定にした場合は、アウトプットを最大まで上げることにより原音と同等となる音量になります。この状態ではオーバードライブ風の歪みまで歪んでいます。

トーンは主にベースに作用する働きをします。このコントロールはBIG MUFFのハイパスとローパスを合わせたフィルターと比べると効きが弱く感じられますが、右に回すほど低域をカットします。元の低域がかなり厚く、最大までカットしてもしっかりと低域は残るため、比較に使用したSupa Tone系の音より太く、高域のざらつきが抑えられているため耳障りが良くマイルドな音像です。これはこもっているわけではなくしっかりと音は分離して聞こえます。逆に左へ回すと低域が大部分を占めだしますが、もこもこになってしまう一歩手前辺りで抑えられています。

ファズの音色はSupa Tone系なのですが、やはり低域が強いため角が取れ、どっしりとした音色で、ロシアンマフとSupa Toneの間のような印象を受けました。しかし、トーンコントロールに違いがあるため完全にBIG MUFFを再現することはできません。Supa Toneより少し前に作られていた3石構成のJumbo Tone Benderに近い音なのかもしれません。図太くゆったり、もったりした感じでスローなドゥーム系に合いそうです。ベースでの試奏レビューも多いことからベース向けにも意識して作られているようです。国外のMXRでの宣伝ではベースにも勧められています。

ボリュームの追従は、ペダル側の音量が高ければ、ゲイン量を調整する程度の追従性はありますが、BIG MUFFと同様に鈴鳴りといったクリーンな歪みは苦手としています。ノイズはファズの中ではかなり少なく、ラジオなどの電波を拾いにくいです。


本機は現在は生産終了しています。2026年の現在では市場に残っている現品限りという状況です。発売からしばらく経過していますが、日本市場では現在も在庫が市場に残っていたり、後継機は販売されていないため、あまり売れ行きが良くなかったのではないかと思われます。トーンベンダーはどうしても当時物のヴィンテージ品か、内部コンポーネントに拘った「D.A.M.」を筆頭に「Castledine」「Pigdog」といった本場英国のビルダーによるハンドメイド作品にのみ視線が注がれているのは、ブティックブームが過ぎ去ってなお、状況は変わっていません。大手がコンポーネントを明記せずに大量生産で作るトーンベンダー系は、売れ行きが不振として終わることが多いです。NOSコンポーネントの厳選が最大のセールスポイントになっているだけあって、やはり本機のような表面実装基板によるチップパーツでの構成が再評価されるのは、まだ時間が掛かりそうです。