LOVEPEDAL Kalamazoo

 

LOVEPEDAL Kalamazoo

Lovepedal Kalamazoo クローム筐体 全体像 Chrome finish enclosure top view
2010年後期製 クローム仕上げ MXR筐体 青LED サイドジャック トゥルーバイパス
DCジャックはアウトジャックサイド 9V駆動 黒いスルーホール型プリント基板 内部表記PCB-00263-02
基板の半田面側は真っ黒ですが部品が確認できます。LOVEPEDALがオペアンプ以外のパーツをSMD(表面実装)化させる前の過渡期の特徴です。Kalamazooは短い期間の間にオペアンプが変更されているということですが、赤い基板の方が早くに生産されていたため、黒いプリント基板の本機はおそらく初期以降と思われます。内部を確認したところ、本機のオペアンプもしっかりと削られており、パッケージ横の半月状に窪んだ印のみが手掛かりとなっています。

外部からの見分け方として、本機の黒スルーホール基板個体は、筐体上部に4桁(10※※)のシリアルが白いテープに印刷されています。筐体底部には代理店ミュゼットのシールがあり、日本向けのシリアルが付けられた個体です。一方、2011年に販売店MusictoyzがアップしたKalamazooの動画の中ではシリアルは黒テープに記されています。黒テープで赤基板も存在が確認できます。シリアルナンバーが混在しているため、数字が若いほど初期ロットということではありません。赤基板が確認できたものとしては、ミュゼットの代理店シールがありつつも、筐体の裏面に大きく数字が掛かれたシールが貼られている物があります。このシリアルの付け方は2010年以前のミュゼット正規品にはよく付けられていた特徴であり、初期の赤基板の確率が高いです。

流通しているKalamazooは基板が赤・黒例外なくオペアンプが削られています。解析サイトに表示されている「LM1458N」搭載基板は、画像引用元のfreestompboxesで画像投稿者が『削られていたICの代わりにLM1458Nを後から乗せた』と投稿しています。オリジナルではない可能性が高く、当時のスレッドでは更なる解析を求めていた様子が伺え知れます。このオペアンプの仕様変更の真意はLOVEPEDALの設計者のSean Michaelショーン・マイケル氏本人から何も語られておらず、ブランドの頻繁な仕様変更による希少価値の底上げに成功していますが、同時に不透明な仕様変更はマーケティングのための戦略と捉えられているのも事実です。

回路にはオペアンプは1つのみ使用した、TS系の流れを組む構成となっています。高域のみに影響を与えるグラスノブの働きは Zendrive系のボイスノブに近い働きをします。
本機は、発売当初にYouTubeのProGuitarShopの動画でKlon Centaurと比較され人気に火が付いた、LOVEPEDALを代表するオーバードライブペダルの一つです。しかし、Klonと比較されたことでケンタ系と誤解されていますが実際は違います。
Centaurの特徴としてオペアンプを三つ使用しています。ざっくりと説明すると、歪み部分、バッファ部分、昇圧回路の計三つを使用しています。そして、歪みにバッファを通ったクリーンをブレンドさせることによって独自の芯のある艶やかな音を表現しています。そのため連結ポットを使用しています。回路的にケンタの系譜を名乗るのであれば、歪みと増幅されたクリーンのブレンドは必須です。このペダルですが、Sean Michae氏も最初からこの回路でCentaurを狙って作ったベダルでは無いと私は考えています。

モデル名のKalamazoo(カラマズー)は、アメリカ・ミシガン州の都市。その英語らしかぬ響きは諸説ありますが、多くが先住民(ネイティブ・アメリカン)の言葉が由来とされています。日本ではややマイナーな都市ですが、企業の創業まで熟知している人なら、ギブソン発祥地として答えが返ってくるかもしれません。ただ、なぜ本機がKalamazooと名付けられたかが曖昧で、ふわっとしていると思われます。Sean Michae氏は私の知る限り、ペダルの売り方文句のつけ方がとても上手く、関連性の薄い名前は好まないため深堀して調べたところ、
ギブソン社が1965年頃にKalamazooという真空管小型アンプを作っていた時期があり、初期モデルにあたるModel1とModel2はフェンダーのTweed Champ 5F1とサウンド・回路的にも良く似ていました。Kalamazooブランドは1970年に完全に消滅しています。この短い期間に作られた、希少なギブソンによるTweed Champを狙ったネーミングとして捉える方が自然な感じがします。ただし過去にSean Michae氏側が、明確にKalamazooアンプを由来にしたという記述は見つかりませんでした。
それは別として、KalamazooとKlon Centaurの関係性は見つからず、しいて言えば筐体が偶然Centaurのノンピクチャー期と似ていたのみです。ですが2010年当時はジョン・メイヤー使用によるシルバー筐体の再評価前で、そこまで人気が無かったノンピクチャーをモデルにして出すのは、販売戦略が得意なLOVEPEDALらしくないと私は思います。
Lovepedal Kalamazoo Black PCB internal circuit IC

コントロールはレベル、ドライブ、トーン、グラスの四つ。

本機の操作性の欠点として、EQ側のノブがどこを差しているのか非常に見にくいです。明るい場所なら中央の溝を目視で確認できますが、ボードに設置して見下ろした際は自分の影に入ると分かりません。ツマミにマーキングをすると良いと思います。

レベルは12時がユニティゲインです。最小では完全にミュートしますがノブを少し動かすと一定の音量まで一気に上がります。そこからはなだらかに可変します。ゲインノブの影響を受け、ゲイン最小設定ではレベル最大で原音より音量は稼げますが、ブースター機種と比べるとそこまでの音量は稼げていません。音量をさらに稼ぐにはゲインを上げる必要があります。
ゲインは左に回し切った最小位置がクリーンで原音にとても忠実です。操作性はなだらかに可変し、キメの細かい瑞々しい歪み方をします。この歪み方は過去に所持していたEternityや200lbs Fuzzでも感じたLOVEPEDAL独特のショーン・マイケル氏らしいチューニングが表れています。
トーンは12時がフラットです。ここから右に回すと高域をカットし中低域を強調、左に回すと高域を強調させます。ウォームなオーバードライブを作りたい場合は右に、キャリっとしたクランチを作りたい場合は左へ回します。
グラスは左に回し切った最小位置がフラットです。高域を伸ばし歪みの質を硬質でキレがあるバリっとした所謂グラストーンを再現します。このノブはZendriveなどよりも効きが良く、視覚的にも最小から右に回すと高域が伸びてくる動作をするので、トーン側は固定としてグラス側で音を作るのもありだと私は思いました。トーン側を中低域よりに設定していても、グラスを上げることで、低域に干渉せずキャラクターを一変させることができます。この二つのEQとゲインを合わせることにより作れる音の幅は広く、Centaurっぽい歪みも再現できるのでは無いかと思います。

Centaurシルバーノンピクチャーと比較しました。コントロールはCentaurは3ノブで、トレブルは最小がフラットではなく12時ごろとなっています。最小は高域を抑えているのですが原音がミックスされているので抜けが悪いことは無くしっかり音が前に出ます。これは構造上Kalamazooでは再現不可能です。ゲインを8時辺りに絞った定番のクリーンですが、比較するKalamazooのレベルノブは音量を最小から微調整ができない仕様なため、ここでの再現は苦手なところです。また稼げる音量もCentaurに比べて低いため、同じ音量にするにはカラマズーはCentaurより歪ませなければなりませんでした。
クリーンに定評のあるCentaurですが、トレブルを上げると歪みがしっかりと現れます。ここはKalamazoo側を低ゲインでグラスを調整することにより再現可能ですが、Centaurの方が明度が高く、サスティーンや倍音には違いがあります。

話題となったProGuitarShopのアンディによる動画は、比較時の各自のノブの位置は表示されていないため分かりませんが、歪ませての比較がメインとなっています。実機で比べるとクリーン設定や、ミックスによる芯の存在感など実際に鳴らした時の音はそれなりに違いが感じられました。昨今ではJHSのジョッシュ氏によるDigitech Bad Monkeyでの比較でも話題になりましたが、実際に実機による比較をしないと、動画では伝わらないこともあるのは確かです。
今では動画投稿が手軽になり、試奏動画が玉石混淆と溢れていますが、当時動画で実機の比較をしてくれる投稿は売り手側と極一部のプロ・セミプロが出してくれるものしかなく、一般のユーザーはその情報を第一情報として受け取るしかできない時代でもあったと思います。私も当時はProGuitarShopを含んでも、多くても精々5チャンネル程度の動画を情報源として購入を検討していました。
Kalamazoo Zendrive Centaur
Centaurとの比較を記したため、長文となってしまいましたが、実際のところKalamazooは決して悪いペダルではありません。二つのEQにより、作れる音の範囲は広く、特に歪み方はLOVEPEDALのブランドイメージ的な響きを備えており、TimmyやZendrive、Centaurとも違う個性があるペダルです。LOVEPEDALは手放した機種も多いですが、本機は手元に残しておきたいと思えるペダルの一つです。

本機Kalamazooは不定なマイナーチェンジを繰り返しつつも、現在も生産されています。
LOVEPEDALは2012年にKalamazoo Goldという、金色筐体バージョンを発売します。こちらはオペアンプを変更、よりクリアにニュアンスを表現するとあり、クロームCentaurからゴールド期の絵付きCentaurにアップグレードさせた表現ともとれる説明があります。打って変って、2016年頃になるとLovepedal Kalamazoo Vintage Silverというゼンドライブを彷彿とさせる黒い筐体にメタルパネル仕様のモデルも発表します。こちらはヴィンテージICを積んだ初期Kalamazooを再現したものとして販売されました。視認性の悪かったツマミは後に通常のノブに変更され、Gold、Black Caucus、Vintage Silverなどの2016年組は、この時期の特徴的な角張が目立つノブを使用しています。ゲインアップや、コンプレッション、ポット変更に伴う可変域など、全てキャラクターが微妙に異なる調整が加えられているという細部に拘ったマーケティングはLOVEPEDALにしかできません。